頑固な高齢の親
来年米寿をむかえる母は、今も一人暮らしをしています。無口で頑固で、よく言えば、周囲に流されない強い人です。反面、融通が利かず冗談も通じにくい。
ざっと思いつくところをあげてみると・・・
・自分だけでなく家族にも厳しい
・愛情は言葉やお金ではなく躾で示す派
・若いころから一度も白髪を染めたことがないなど、いちど決めたら曲げない
よく、高齢になってから頑固になったという話を聞きますが、母の場合はすでにそうだったので付き合いかたには慣れている方なのかもしれません。頑固と言っても種類はさまざま。もっと頑固な人もいらっしゃると思うけれど。
認知症でないなら、頑固な高齢の親とは、否定しない・嫌なことがあっても笑顔で受け流す、このあたりがポイントになるのでしょうか。
母は、今もやはり頑固なままです。周りからはどう見えていたかわかりませんが、私はこの母が煙たくて仕方ない時期がありました。
友達の家に遊びに行ったときにお会いしたお母さんがたが朗らかに見えて、うらやましかったものです。

高齢の親が見せる、近所への気遣い、娘への気遣い
風邪ぎみだとメールの返事に書いてきた母の様子を見に、灯油を1缶持って行ってきました。ついでに、庭の掃除を少しだけしてきました。
私は、ただ黙々としているだけの作業が気持ちよく感じました。年明けから同居の義母のご機嫌がいまひとつで憂鬱だったためです。
ところが…私が落ちた椿の花や葉っぱを拾っていると、後から母が出てきていろいろと言います。
どっちが幸せ?義母と母を比べて考えた週末
高齢の母がする、お隣りへの気遣い
実家の庭はとても狭いですし、掃除といってもしれているのですが、放っておくとあっという間に枯葉が落ちてたまってきます。
椿の花がぽとぽと落ちる時期でもあるため、それも枯れ葉といっしょにお隣の庭に飛ばされていくことがあり、母は気がかりなようでした。
「葉っぱのことでお隣に迷惑をかけちゃってるから」と。なのに…
「お姉ちゃんは(私のことです)、手が痛いんだから無理しちゃだめ」。
「手袋をちゃんとしたらどう?軍手を持ってくるわ」。
「その体勢は腰に良くないでしょ」。
私がリウマチで手術をしたことを母には知らせていませんが、こういうことを何度も言ってきました。
手術が終わりました私としては、風邪気味なうえに腰痛もちの母が、強烈な寒さのなか割烹着のまま出てきたことの方がよっぽど心配でした。
もうそろそろ、私の言うことを聞いてくれてもいいのではないかなぁ・・・
「寒いからおかあさんは家に入っていて」
「私の手は大丈夫よ、ほら、手首にサポーターもしているし」
「それに、軍手をすると細かい葉っぱを拾いにくいから」
いったん私はこう返事したのですが、母の耳には全く入っていないようでした。
母は宣言どおり、奥から軍手を持ってきて差し出してくれました。耳が遠いから私の言葉が聞こえていなかったのではありません。
母のなかでは、自分が正しい、娘が心配、という気持ちが揺らがないのです。
私は黙って差し出された軍手をはめ、葉っぱを拾い続けました。
終わりに
老いても母が、身近にいる人のことを考えて行動するのは、悪いことではありません。あとすこしで60代になる娘の身体を心配したり、お隣の若いご夫婦への迷惑を考えたり。
でも、高齢で一人暮らしをしているのだから、まわりのことより、自分のことをもっと心配していてくださいと思ってしまいます。
私は、あるものに目を向けるのが下手なのかもしれません。
かわらず「自分が正しい」と譲らない母でも、一人でなんとか元気に暮らしていること。こうして顔を見に行ける距離のところに住んでいること。
それを私は、もっと素直に喜ぼうと思います。
できることは続けつつ、私なりに距離を置きながら見守っていきます。

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